三井住友銀行の企業年金基金は、インフラ投資やプライベート・エクイティ(PE)などオルタナティブ投資を増加させる運用方針を示した。流動性は低いものの、リターン(収益率)の最大化を追求する。日本国債は過去10年以上、低水準に抑えてきたが、日銀の政策修正を受けて今後、金利上昇が予想されるため、運用戦略の見直しを検討する可能性がある。
同行の野手弘一常務理事・運用執行理事が、2023年11月14日に東京で開催された第17回グローバル・フィデューシャリー・シンポジウムのFireside Chat(ファイヤーサイド・チャット)対談のなかで明らかにした。
野手氏が11年前に現職に就任して以来、同行の年金基金では、常にある程度のリスクを取り、リターンを追求する運用にコミットしてきたという。いわゆる「アベノミクス」が始まった2012年12月以降は、国債の保有を減らす一方、株式の配分を大幅に増加させた。
同基金の運用資産残高は約1兆円。日本国債は約110億円で、その水準は2012年以来変わっていない。ただ今後、日銀の超金融緩和政策からの「出口」が予想される中、「今後、国内金利が上昇する可能性があるため、そこは考えたい」と野手氏は述べた。
<国内VC支援は「使命」>
同年金基金は、合計で約5,000億円を国内外の株式に配分し、海外資産は、為替ヘッジをほとんど行っていない。長期投資アプローチを基本とし、短期的なパフォーマンスに基づいた戦略の変更は行わない。また、金融危機などに備えて、常に短期流動性を保つことを念頭に、一般勘定で約3年の給付分を現金またはそれに相当するもので保有している。
ただ、野手氏は、低流動性資産に分類しているオルタナティブ資産のPEや、プライベート・デット、インフラ、不動産への配分を今後、現在の30%から40%に増やす予定であることを明らかにした。なお中流動性資産としているヘッジファンドは現在13.5%保有しているという。
野手氏は、国内ベンチャー・キャピタル(VC)への投資について「企業や大学のベンチャー・キャピタルに投資することが私たちの使命だと考えている。ベンチャーは失敗するリスクもあるが、将来の国力につながると強く信じている」と話す。VC企業を支援することは、長期投資という観点からも非常に重要なことだと強調した。